学生時代、「経営学を勉強しています」というと「経済学なんですね」と間違えられることが多った。「経営学です」と訂正すると「社長さんになるんですね」と言われた。ここでは、二つの問題がある。一つ目は、経営学よりも経済学が一般に認知されていること、二つ目は経営学=会社を経営、が同一視されていること、の二つである。
まず、経営学の端的な系譜を見ていく。経営学の源流を辿ると大まかにドイツ経営学とアメリカ経営学とに分けることができる。前者は経営経済学として、経営の経済学的側面を個別経済的視点から考察する方法論である。私経済に関する学問であり、経営経済学は“金儲け論”という批判や科学なのかという論争が起きた。数々の論争の果てに、経営経済学は学問としての体系を確立した。
後者は、管理学として、一企業の管理、一工場の管理を中心とした実践論である。有名どころを挙げると、テイラーの「科学的管理法」である。これまでの成り行き的生産を科学的に分析(動作や時間管理など)し、客観的に標準化した。テイラーを始まりとして、人間関係論や組織論、意思決定論が展開された。ドイツ経営学は、企業を対象にすることに対し、アメリカ経営学は組織一般を対象にすることの違いがある。その拡張性から、戦後アメリカ経営学が中心となった。以上から、経営学は個別の経営事象(運営や管理など)を扱うことが中心となる。
つぎに経済学は、経済主体(人や組織など)が市場においてモノやサービスなど売買する事象をモデル化して説明しようとする学問といえる(多様な定義がある)。中でも、ミクロ経済とマクロ経済とに分けることができ、前者は個々の経済主体が市場でどのような活動をしているかを考察し、後者は物価、インフレ、デフレ、G D Pなど大きな経済的動向を考察している。
ミクロ経済は一見、経営学との親和性があると思われるが、一点大きな違いがある。ミクロ経済は市場メカニズムを対象にすることに対し、経営学は主体(企業をはじめとした組織)を対象にしている。他にも「経済人」を前提にする経済学、「経営人」を前提にする経営学というそもそもの違いがある(詳細は次号に)。ただ、今日経済学は多様な分野が生まれており、明確な境は曖昧になりつつある。
経営学は分析対象が企業(組織)という単体であるのに対し、経済学は市場メカニズムという全体的な事象であった。このような区別のもと、双方を学ぶとよりそれぞれの特徴が浮かび上がると思われる。どっちが優れているとかでなく、双方とも必要なのである。特に、経営学は私たちの実世界そのものに密接に関わっている。
ただし、学問として経済学が約250年の歴史があるのに対し、経営学は100年ちょっと、、、(何を始まりかにより変わる。諸説あり。)しかし、経営という事象自体は人間が社会、コミュニティが生まれた時からあるので、紀元前からあった、、、??戯言はこの辺でやめに。